5月28日、都内でマクラーレン・オートモーティブによる新型車の発表イベントが行なわれました。アンベールされたのは、今年のジュネーブショーで正式発表がおこなわれたばかりの「マクラーレンP1」です。マクラーレンは「世界で最も優れたドライバーズカー」という表現をこのマクラーレンP1に与えていますが、では「世界で最も優れたドライバーズカー、マクラーレンP1」とは、どのようなクルマなのか? ”1億円のスーパーカー“という部分だけでなく、もう少し具体的に考えてみます。

●レーシングカーのような制約がないロードカー。そして新たな究極のマクラーレンが発明された。

 マクーレンP1は916ps・900Nmという驚異的な性能のハイブリッドユニット(プラグイン式)を搭載し、350km/hの圧倒的な最高速を提示しますが、それぞれは車両全てのバランスを最高レベルに引き上げるためのひとつの到達点。最高速やパワーといった数値に世界最高を求めたわけではないということは、マクラーレンP1のプログラム・ディレクターであるポール・マッケンジー氏のコメントが証言しています。

「最高速度だけでみてしまうと世界最速のクルマとは言えないかもしれませんが、そもそもそれが目標ではありません。サーキットで史上最速のロードカーを作ることを開発目標に据えており、それがオンロードのドライビングにおいても価値のあることと考えています。つまり、スーパーカーの総合的なパフォーマンスを試す1台です」

 では、マクラーレンは『サーキットで史上最速のロードカー』をどのようなかたちで具現化したのでしょう。これは次に引用するチーフ・デザイン・エンジニアのダン・パリー・ウィリアムス氏の言葉に端的に示されています。

「パッケージングに妥協がなく、軽量で、革新的なテクノロジーを最大限に活かしている。サーキットまで自走することができ、さらにボタンを押すだけでレースができてしまうクルマを作り上げることこそが開発当初からの目標でした」

 マクラーレンの持てるテクノロジーが最大限に活かされるということは、言うまでもなく完全なレースカーとして成立することを意味しています。レースカーとしての性能がひとつのボタンを境にロードカーと連続している世界。こうしたかたちで、具現化されているわけです。

 レースカーの世界と繋がったロードカー。ここで言う「レースカーの世界」とは、紛れもなくマクラーレンが活躍の場としてきたF1を含む世界最高のレースシーンです。マクラーレンP1でそうしたレースに参戦できるわけではありません。しかし、頂点の頂を知るマクラーレンの英知が、その全てを結して作り上げた世界です。それは時にレースカーの領域を凌駕すらします。ロードカーへの連続性があるこそ実現できる、全く新しい解がある。チーフ・テストドライバーのクリス・グッドウィン氏のコメントを引用しましょう。

「ル・マンカーでレースに参戦した経験から、エアロダイナミクスがどんなものであるかはよく理解していますが、このクルマはそれと並ぶレベルの空力パフォーマンスが実現されています。それだけでなく、技術的な制約がない分、私たちの方が有利とさえ言える。レースでは接地性を制限するため、エアロダイナミクスやサスペンションに関する規制がありますが、ロードカーではこれらの規制にとらわれる事は有りません。『マクラーレンP1』の優れている点は、オンロードでは圧倒的に速いスーパースポーツカーと感じることができるだけでなく、サーキットでは上質なレーシングスポーツカーと思える点にあります。このようなクルマはこれまでにありませんでした」

 マクラーレンP1のリリース資料はA4サイズで24ページに及ぶもので、一見して膨大な機能とスペックが並べられていましたが、そこから読み取れるのはあくまで「洗練」であると感じます。これまで受け継ぎ、蓄積し、開発を続けてきた膨大なエンジニアリングを、惜しげ無く注ぎ込み、最も洗練させ開発したのがマクラーレンP1。それはマクラーレンという集団が、今最もつくりたかったクルマを「発明した」にも等しいと言えるでしょう。

マクラーレンP1、日本初上陸 :レポート on エキサイトイズム