7月10日にデビューしたスバルの新型車「インプレッサ SPORT ハイブリッド 」に試乗しました。スバルのハイブリッド第一弾は、2013年デビューの XVハイブリッド。ハイブリッドカー=燃費スペシャルという既成概念にとらわれることなく、ハイブリッドの特性を活かしスバルらしい走りの世界をさらに拡張することに挑み、そして形にしてしまった異色の1台でした。

  XVハイブリッドは現在、XVシリーズにおいて4割、またインプレッサ・シリーズ全体の販売ボリュームのうちでもおよそ2割を占めるまでに浸透。じっくり時間をかけながら市民権を獲得したこのスバル・ハイブリッドですが、インプレッサの5 Dハッチバックモデルである SPORTの新たなフラッグシップとして加わったのが、この「インプレッサ  SPORT ハイブリッド」です。昨年11月のマイナーチェンジでスポーティなスタイルとなったD型インプレッサ・シリーズですが、新型インプレッサ  SPORT ハイブリッドには専用デザインのバンパー類やアンダーモール、ガンメタリック塗装の17インチホイールといったエクステリアが与えられており非常にスポーティな外観が特徴。少し GRBの STIにも似たアグレッシブさを感じさせます。

 今回の試乗コースは、木更津市周辺の一般道。台風の影響で強い雨風に見舞われる悪条件ではありましたが、ワインディング路も含むルートで約1時間その走りを試しました。

XM3U7545

インプレッサ SPORTのガソリンモデルと全長は同一ながら、全高は+25mm、全幅は+15mm、最低地上高は−15mmとそれぞれサイズが異なる。ハイブリッドユニットの搭載位置の関係で、重心高は10mm低くなっている。

完成されたスポーティさと上質さ

 足回りはインプレッサ  SPORT ハイブリッドの専用仕様となっており、フロントサスアーム付け根ブッシュの変更、WRX用フロントクロスメンバーの採用、リアサスジオメトリの変更、専用ダンパーおよびスプリングの採用などが行われています。またタイヤも2.0リッターガソリン車の205/50R17から一回り幅広大径となる215/50R17タイヤが標準となります。つまり運動性能レベルを高めてきたということ。低回転から気持ちのよい発進加速を持ち、また中速域においても帆に風を目一杯に受けたヨットのように息の長い加速性能を発揮するレスポンスの良いハイブリッドユニットの組み合わせは、期待以上の楽しさです。

 応答性の良いフロントと高いスタビリティで荷重をしっかり受け止めるリアという前後バランスが絶妙で、WRXのように腰のあたり「グッ」と旋回を感じながらコーナーを駆け抜けることができる走り。WRXのようなマッシブさはなくとも、体を通して感じる正確な応答性を持った走りは、大雨のワインディング路にも楽しみを見い出させてくれました。モデルライフで熟成期を迎えた現行インプレッサをベースに XVで培ったハイブリッドユニットの特性を取り込み、しっかりとスバルらしい味付けのスポーティさと質感を作り上げてきた、そんな印象です。

 走りに関してもうひとつ感心してしまったことがあります。それは静かであること。雨の中ロードノイズを拾いやすい悪条件の中でも、街乗り領域でのキャビン内は非常に静粛性が高いといえます。ベースモデルもこの点では昨年のマイチェンで大きく改良されていましたが、インプレッサ  SPORT ハイブリッドにおいては静粛性が特に強化されており、走行中も耳に心地よい静けさが車内を包みます。

 やや気になったのが、イグニッションON/OFF時にのみ感じるエンジンの揺れ。どちらも「ぶるぶるっ」とボディに軽く揺れを伝えてきました。試乗できたハイブリッドはこの1台だけだったので比較ができなかったのですが、静粛性や発進加速性能、乗り味など、いずれも質感高くまとめられてるゆえ、こうした部分にも質感を求めたくなってしまうというものです。

XM3U7570

XM3U7575

XM3U7549

インプレッサ SPORT ハイブリッド。前後ライトにはクリアブルーのレンズが仕込まれている。

高められた省燃費性能

 省燃費性能も 従来型 XVハイブリッドのシステムからバージョンアップが図られています。JC08モード燃費は、従来型XVハイブリッドに対し0.4km/Lの上乗せとなる20.4km/Lとなりました。スバルのハイブリッドは、5.5 Ahの容量を持つニッケル水素バッテリーと10k Wの出力を持つトランスミッション内蔵型モーターを組み合わせたシングルモータータイプのシステムで状況に応じてEV走行も可能としていますが、インプレッサ  SPORT ハイブリッドの登場にあたり低燃費化のキーとなったのはバッテリー制御のさらなる積極活用化です。

 従来システムに対し、バッテリー充電状態が少ない状態でもバッテリー制御を活用=モーター駆動力をより積極的に使ってガソリン消費領域を軽減することで、燃費改善を果たしています。また CVTのフリクション低減やトルコンのロックアップ傾向の拡大も加え、発進加速や中間加速もよりレスポンスを高めているとのことで、これらも効率化に貢献しているでしょう。なお今回の試乗は登りのワインディングが多めだったこともあるのか、車載燃費計の数値は10km台。高速や街乗りを含めた現実的な燃費性能はいかほどが気になるところではありますが、そこまで把握するには至りませんでした。

XM3U7587

 新型インプレッサ  SPORT ハイブリッド、価格は「ハイブリッド 2.0i アイサイト」が250万5600円、快適装備やスタイリッシュな内外装パーツを充実させた「ハイブリット 2.0i-S アイサイト」が263万5200円ということで、価格面でもインプレッサ SPORTのフラッグシップということになります。

最新型アイサイトは次期型ハイブリッドからか

 インプレッサ  SPORT ハイブリッド全車に標準装備されるアイサイトはVer.2。アイサイトには、よりハイスペックの Ver.3が登場していますが、ハイブリッドモデルに関してはモーターとの協調制御を含めより複雑で大掛かりな制御プログラムでアイサイトをコントロールする必要があるとのこと。そのため今回のインプレッサ SPORT ハイブリッドでは 最新型アイサイトとの組み合わせが実現されませんでした。よりハイスペックな安全デバイスがあるならばそれとの組み合わせを期待したいものですが、 スバルとしてはアイサイトVer.2でも現時点で十分な性能とアドバンテージを持っていると言い、また最新の予防安全性能アセスメントにおいてもアイサイトVer.2搭載の XVハイブリッドで最高ランクを獲得しています。

 ハイブリッドモデルについては、現時点において技術的な蓄積と市場での実績という確実性を持つ Ver.2との組み合わせが最も優れたパッケージであるということと理解できます。人情的ではなくエンジニアリング的な方法論を優先した結果ということでしょう。もちろん研究開発は進めらていることでしょうから、次期型として登場するであろう電動化を内包するモビリティへの最新型アイサイトやアドバンスドセイフティパッケージといった先進安全装備の充実に期待したいところです。

imprezahybrid01

試乗したインプレッサ SPORT ハイブリッドのカラーはヴェネチアンレッドパール(右)。インプレッサ  SPORT ハイブリッドのテーマカラーだという鮮やかなクォーツブルーパールと比較すると対称的な印象を受けますが、スバル車では幅広い車種にラインナップされるなじみ深いカラーで、個人的な話で言えば初代レガシィ・ツーリングワゴンGTの後期型を思い起こさせるような落ち着いた色味が好みです。

http://www.subaru.jp