8月25日にスバルから注目すべき新型車が登場しました。「WRX STI」「WRX S4」です。WRXという名が国産車の歴史に登場したのは、1992年の初代インプレッサ。公道ラリー競技の世界選手権競技であるWRCに参戦を続けていたスバルらしい命名で、以降、同選手権でのインプレッサの活躍とともにその名を知らしめるに至った、国産4WDスポーツモデルの代名詞ブランドです。
20年以上に渡ってインプレッサのサブブランド名として与えられてきたこのWRXの名が、今回スバルのコアブランドに”昇格“、スバルのフラッグシップスポーツセダンシリーズのモデル名として、完全に独立を果たしたというわけです。
マル改モノのSTIバージョンが投入された初代インプレッサWRXシリーズからの長い足跡を思うと、この決断には名残惜しさもあります。しかし、モータースポーツで高い戦闘力を持った強靭なシャシー性能とフラット4ターボの心臓部という強烈なアイデンティティがある以上、”期待値、期待感“といった部分では、この「最新のWRX」は、これまで通りの大きな昂りを持って多くのファンが受け止めているのではないかと思います。僕自身は新型WRX、特にSTIモデルを前にやはりそう感じました。
ラインナップの頂点は、308psのEJ20ターボと6速MTを組み合せた「WRX STI」。スタンダードモデルである「WRX S4」にも、次世代ボクサーとしてコンパクトな燃焼室を持ち燃焼効率や排気ガス性能で新たな決意を示しているFA型をベースとした直噴2リッターターボ(DIT)エンジン、最新スペックのアイサイト(Ver.3)、リニアトロニック(CVT)など、スバルにおけるハイエンドデバイスの数々が奢られています。
スタンダードがすでにハイエンドクラスの誂えであることからも、新しいWRXに与えられた大きな使命は、これまでのWRXシリーズ同様の超高性能ぶりを頂としつつ、同社のハイエンド・スポーツセダンの裾野を広げることであるとわかります。
今回は同社の発表会場に足を運ぶことができましたが、中でも僕が目を奪われたのは、やはり「WRX STI」でした。
WRX S4に選ばれたFA型のDITエンジンは、一般道では強烈のひと言と言える圧倒的トルク性能(400Nm≒40.8kg-m)を持つユニットで、同時に将来を見据えた最新の燃焼室形状、エミッション性能を備えています。一般道でその性能を体感する限り、フラット4のスポーツユニットとしてすでに驚異的なスペックのエンジンだと言えます。
一方、WRX STIは95mmのボアに大きなバルブを持つEJ20。8000回転付近でも使えるという高回転域でのパンチ力、FA20ターボに比べ僅かに軽量なエンジン本体重量などのメリットはありますが、一方で燃費性能を筆頭とする環境性能はFAに対しとてもではないが太刀打ちできない。すでに燃焼室まわりの高効率化策などは現場レベルでは「開発し尽くされた」ものだといい、エミッション性能はともかく高出力化とトレードオフとなる燃費性能の代償は、JC08モードで9.4km/lという数値を見れば、やはり時代遅れと言っても過言ではないものです。
しかしながら、STIモデルは伝統あるEJ20のターボユニットが選ばれている。これは、スバルにとって将来的にもモータースポーツが重要なコアとなり、またカスタマーにとっても最も得意なパッケージングでその世界を体験して欲しいというこだわりの表れなのだろうと感じました。
ゴールへの到達を確実なものとし、さらに勝利を常に目標とするモータースポーツフィールドで、スバルのEJは20年以上に渡って試され続けてきたユニットであり、性能のみならず、信頼性や耐久性、計画性といった面において最も洗練された、つまりあらゆるバグが排除された究極的なスポーツフラット4ユニットです。
スバルがこのWRXで将来に渡りモータースポーツへのチャレンジを続けて行くという姿勢、そしてそこで得られたスバルの「確信」を、スポーツカーと走りを愛してやまないカスタマーに届けたい、そういった視点が、WRX、特にSTIモデルには含まれていると感じたわけです。
簡単に言い換えれば、それは「WRX STI」のサブブランドを受け継ぎ続けてきた歴代のインプレッサ(と、この際BC、BEのレガシィGTやRSを含めてもいいでしょう!)たちに僕らが期待し共感してきたことそのものなわけですが、そのスピリットが最新の「WRX」として受け継がれた走り始めるのだと思うと、これまでにも増して胸が熱くなると言うものです。
SUBARU WRX S4
・FA20 Turbo ”DIT“ 221kW(300ps)/5600rpm,400Nm(40.8kg-m)/2000-4800rpm
・fuel consumption 13.2km/l
・Sport lineartronic
・VTD-AWD
・Eyesight Ver.3
¥3,348,000〜
SUBARU WRX STI
・EJ20 Turbo 227kW(308ps)/6400rpm,422Nm(43.0kg-m)/4400rpm
・6 Speed Manual Transmission(for WRX STI based on 75series )
・Multimode DCCD AWD
・fuel consumption 9.4km/l
¥3,790,000〜